通信制高校の学費はいくら?全日制との違いや就学支援金をわかりやすく解説

近年では、通信制高校に通う生徒が増え続けており、2024年度に通信制高校に通う生徒は約29万人となりました。高校生の11人に1人が通信制高校を選択しています。

通信制高校への進学を考える際に、もっとも気になるポイントが「学費」でしょう。「通信制高校の学費は高い」と先入観を持っている方も多く、費用面で不安を感じる保護者や生徒も少なくありません。

この記事では、通信制高校の学費のしくみや全日制高校との違い、就学支援金など、進学先を選ぶ際に必要な情報を解説します。

通信制高校の学費相場

通信制高校の学費は、選ぶ学校によって大きく異なるため、入学前にしっかりと確認しておきましょう。

ここでは、公立と私立それぞれの通信制高校の学費相場や特徴について解説します。

通信制高校の学費の内訳

通信制高校の学費の内訳は以下の通りです。

内訳内容
入学金・通信制高校への入学資格を得るための費用
・入学時に1回のみの支払い
授業料単位制を導入している学校が多いため、1単位あたりで設定
教材費・教育関連費・教科書や学習用資料、補助教材などの費用(私立は、カリキュラムや学習方法によって異なる)
施設設備費・スクーリングで使用する施設(面接指導等実施施設)
・インターネットなどを利用した学習システムの利用費用
その他諸経費・制服代・スクーリング時の交通費・宿泊費

教材費・教育関連費や施設設備費は学校によって名称が異なります。

通信制高校は単位制を導入している学校が多く、1単位当たりで授業料を設定しています。そのため、授業料は修得する単位数に応じて変わります。

高校を卒業するためには3年間で74単位以上の取得が必要です。そのため、1年間で24〜26単位を修得する学校が大半です。ただし、転入学や編入学の場合は、前籍校で修得した単位を引き継ぐため、必要な単位数が減り、授業料がおさえられます。

なお、サポート校を利用する場合には、年間50万円〜100万円ほどの利用費が追加で発生します。

ただし、2倍の単位を取得するわけではないため、費用が倍になることはありません。

サポート校では、生徒が通信制高校を無事卒業できるように、専任講師やカウンセラーが学習の指導や相談、精神面のケアを行っています。

また、自宅学習が中心である通信制高校に対して、サポート校では通学の機会が多く、友達づくりのきっかけとなるケースもあります。

公立通信制高校の学費相場

公立通信制高校の学費相場は以下の通りです。

項目費用の目安
入学金(初年度のみ)500円程度(自治体によって変動あり)
授業料1単位300円〜1,000円程度
年間26単位履修の場合:7,800〜26,000円程度
教材費10,000円~30,000円程度
施設設備費なし

公立通信制高校は、都道府県が設置・運営しているため、学費は比較的安く設定されています。3年間でも10万円以内におさえられる学校もあり、私立通信制高校の約10分の1程度で通学できます。

一般的に公立通信制高校は私立通信制高校に比べサポート体制が手薄です。そのため、卒業率が低いといわれています。一方、私立通信制高校は、学費分以上の手厚いサポートを受けられるため、3年間での卒業率は高くなります。

私立通信制高校の学費相場

私立通信制高校の学費相場は以下の通りです。

項目費用の目安
入学金(初年度のみ)10,000円~50,000円程度
授業料1単位7,000円~12,000円程度
年間26単位履修の場合:180,000〜300,000円程度
教材費・教育関連費10,000~60,000円程度
施設設備費10,000~60,000円程度

私立の通信制高校の学費は学校によって大きく異なります。1年間の目安は20万円〜100万円程度になるでしょう。

なお、通信制高校には、スポーツや美容、イラストなどの専門的なコースを設置している学校も多くあります。専門的なコースで入学する場合は、別途受講料や実習費が発生します。

私立通信制高校は、公立と比べて学費が高くなる分、各種サポートや学習システムが充実しているのが特徴です。

通信制高校の学費を支払うタイミングと支払い方法

通信制高校の学費は、入学時と新年度の開始前に支払います。支払い方法は銀行振り込みやコンビニ支払いがほとんどです。

支払い回数は以下の通りです。

  • ●1年間分を一括納入
  • ●前期・後期の年2回の支払い

一括納入の学校が多くありますが、分割払いができる学校もあります。学校によって異なるため、入学時の説明をよく聞いておきましょう。

なお、期限までに支払わなければ入学取り消しや除籍になってしまいます。学費の支払いに不安がある場合は、必ず学校に相談をしましょう。

全日制高校と通信制高校の学費の比較

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査の結果」によると、令和5年度における全日制高校の学費は以下の通りです。

  • ●公立高校:59万7,752円
  • ●私立高校:103万283円
    ※就学支援金適用前の学費

通信制高校は、全日制高校よりも学費を安くおさえられる可能性があります。

全日制高校では授業料を一律で支払いますが、通信制高校は自分で選択した授業の授業料だけを支払うためです。

また、全日制高校では着用しなければいけない制服も、通信制高校では任意である場合が大半です。その結果、学費や諸経費を安くおさえられます。

私立通信制高校の学費が高くなる要因

公立通信制高校と比較すると、私立の学費は高いと感じるかもしれません。しかし、私立の通信制高校には、公立に比べて安心して学べる環境や進路実現のためのサポートが整っています。

ここでは、学費に差が生まれる要因を解説します。

サポートや指導体制

私立通信制高校は、学習や生活面でのサポートが手厚い点が1番の魅力です。学習面はもちろん、メンタル面でも充実したサポートを受けられます。

たとえば、私立通信制高校では、中学生や小学生レベルから再度勉強を教えてくれる学校もあります。自宅からでも質問できる環境を整えるため、タブレット端末や学習管理システムを使用している学校が大半です。

また、カウンセラーが常駐している学校では、教師との信頼関係が築きやすく、安心して高校生活を過ごせます。

さらに、スクーリングのスケジュールや日数が調整できる学校もあり、遠方に住む生徒でも通学しやすい点は大きなメリットです。

登校日数

通信制高校は、自宅学習と通学のどちらをメインにするかで学費が大きく変わります。また、通学する場合も、週1回や週3日、週5日などさまざまな通学スタイルがあります。

たとえば、飛鳥未来高等学校の通学日数による年間学費の違いは以下の通りです。(就学支援金適用前)

スタイルネットベーシックスタンダード3DAY5DAY
通学日数月1回(自宅学習がメイン)月1回
週1回週3回週5回
年間学費の目安485,000円485,000円565,000円665,000円665,000円+選択コース費用

(参考:飛鳥未来高校グループ)

また、ヒューマンキャンパス高等学校の場合は以下の通りです。(就学支援金適用前)

コース一般通信通学専門チャレンジ専門
通学日数自宅学習がメイン週1日~5日週3日~5日週3日~5日
年間学費の目安380,000円500,000円670,000円820,000円

(参考:ヒューマンキャンパス高等学校)

自宅学習がメインのコースと比較して通学日数の多いコースは学費も高くなります。自分の目標に合わせて通学スタイルを変えて学費をおさえるのもひとつの方法です。

  • ●慣れるまでは通学を多めにして少しずつ減らしていく
  • ●大学受験をめざすために3年生から通学日数を増やす

なお、自宅学習がメインになると、先生から直接指導やサポートを受ける機会も少なくなります。そのため、自己管理が苦手で1人で学習できる自信のない人には、通学メインのコースがおすすめです。

専門コースの有無

私立通信制高校では、以下のような専門分野の勉強ができる学校もあります。

  • ●プログラミングやeスポーツ
  • ●声優やボーカル
  • ●保育・福祉・美容
  • ●調理やパティシエ
  • ●大学進学

専門コースでは、専門学校やその道で活躍するプロと提携しているため、本格的な指導が受けられます。将来の進路を意識した学びができるのはもちろん、自分のやりたいことや興味のある分野を見つけるきっかけにもなるかもしれません。

また、卒業時に専門的な知識や技術が身についていれば、自信にもつながります。

なお、専門コースを履修する場合は、その分学費も高くなります。事前に学校に確認してください。

通信制高校の学費をおさえる方法

最後に、通信制高校の学費をおさえる方法を紹介します。

全日制高校よりも安い学費で通える可能性がある通信制高校ですが、私立の場合は、登校スタイルによっては高額になるかもしれません。

少しでも学費をおさえながらサポートを受けるための参考にしてください。

高等学校等就学支援金制度を利用する

高等学校等就学支援金制度とは、国公私立問わず、授業料の全額または一部を国が支給する制度です。卒業後に返還する必要はありません。

以下の家庭が対象となります。

  • ●日本国内に住所がある
  • ●高等学校、高等専門学校(1〜3年)、専修学校(高等課程)等の学校に通っている

支給される金額は、世帯年収によって異なるため、文部科学省の最新情報を確認してください。

なお、2025年度に限り「高校生等臨時支援金」が設けられました。これにより、今まで支援を受けられなかった、世帯年収が約910万円以上の家庭も、就学支援金の対象となりました。

ただし、就学支援金には支給期間と支給額や対象の単位数に上限があります。

  • ●支給対象単位数の上限:74単位
  • ●年間の支給対象単位数:30単位
  • ●支給期間の上限:48ヶ月(全日制高校の場合は36ヶ月)
  • ●一単位あたりの支給額は4,812円

在学期間が延びたり74単位以上を取得したりする場合の学費は自己負担となります。休学する際は、就学支援金の停止手続きを忘れずに行いましょう。

高校生等奨学給付金制度(奨学のための給付金)を活用する

高校生等奨学給付金制度とは、国からの補助を受けて都道府県が実施する、返還不要の給付金です。

授業料以外の教育費負担を軽減するために、低所得世帯を対象に実施しています。授業料以外の教育費とは、教材費や修学旅行費、通信費などを指します。

高校生等奨学給付金制度の国の補助基準は以下の通りです。

 給付額(年額)給付額(年額)
世帯状況国立・公立私立
生活保護受給世帯
(全日制等・通信制)
3万2,300円5万2,600円
住民税非課税世帯
(通信制)
5万500円5万2,100円

なお、各都道府県において制度の詳細は異なります。「高校生等奨学給付金のお問合せ先一覧」を確認し、都道府県に問い合わせてください。

給付を受けるためには、お住いの都道府県または学校への申し込みが必要です。新⼊⽣は、4〜6⽉に⼀部早期⽀給の申請ができます。

特待生制度を利用する

特待生制度を利用して、学費の一部を免除してもらえる学校もあります。特待生制度とは、学業やスポーツなどで特に優れた成績を収めた学生に対して、学費の免除や奨学金の支給などを行う制度です。

たとえば、一ツ葉高等学校では「学力特待生」が導入されています。

  • ●授業に対面もしくはオンラインで出席する
  • ●指定した模試を受験する
  • ●キャンパスで行われるイベントに参加する
  • ●特待生インタビューに協力できる

いずれも、過去の模試の結果と特待生試験の結果で判定します。

また「スポーツ・芸能・技術・芸術特待生」の条件は以下の通りです。

  • ●授業に対面もしくはオンラインで出席する
  • ●活動報告を月1回行う
  • ●キャンパスで行われるイベントに参加する
  • ●特待生インタビューに協力できる

対象者は今までの活動実績から判定します。

なお、特待生制度の条件は、学校によって異なります。特待生を目指す人は、学校に問い合わせてみましょう。

なお、通信制高校の入試は全日制高校に比べて難易度が低い傾向があります。ただし、特待生制度を利用する場合は、過去の実績や面接でのアピールなどが重視されます。

学費をおさえて通信制高校に通おう

通信制高校には、公立であれば年間数万円程度から通学が可能です。しかし、私立では通学スタイルや専門コースの有無により年間20万〜100万円以上かかる場合もあります。ただし、学費の安さだけで公立を選択し、適切なサポートを受けられず、3〜4年で卒業できない可能性については考慮しなければいけません。

また、通信制高校の授業料は単位制です。そのため、必要な単位数に応じて授業料が変動します。さらに、入学金や教材費、施設費、スクーリングの費用などが別途発生します。

通信制高校に学費をおさえて通うためには、高等学校等就学支援金制度や高校生等奨学給付金を活用しましょう。特待生制度が利用できる学校もあります。

私立通信制高校は、サポート体制や通学の柔軟性、専門教育の充実など、多くの魅力があります。ただし、その分コストも高くなるため、自分の目的や予算に合わせてお子さまに合う学校を選びましょう。

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